縁側で刀の手入れをしていた土方の後ろから声をかけた
「土方さんの初恋はいつでした?」
「・・・どうした?急に」
「好奇心でさァ。」
「さぁな。」
土方は遠い目をした。
多分俺の姉貴を置いてきたことを思い出したんだろう。

しばらく間をおいて土方が切り返す
「そういえば、チャイナとはどうなんだ?」
「どうもないでさぁ、手なんて出せるわけないじゃねぇですかぃ。」
そう俺が悲しく笑いながら部屋に戻ろうと腰を上げると
「そっか・・・」
と土方も悲しそうに空を見上げた
土方さんと近藤さんは俺がもう長くないことを知っていた。


もし俺が彼女に手を出してしまったら。
俺が死ぬって知ったとき
きっと残された彼女は壊れてしまうだろう。純粋な心とともに
沖田はそんなことを考えていた。


すると廊下から声が聞こえた
「沖田さん?お客様ですよ。」
「ん?誰でィ?」
山崎に連れられて入ってきたのは神楽だった。

「遊びに来たアル。」
そういって彼女はまるで小学生のような笑顔を見せた
「おぅ」
神楽はお前に騙されただの、今日は銀ちゃんがだの世間話を生き生きと語っていた

その姿を見るたびに胸が高鳴る、この行くあてを失った鼓動をどうすればいいのかと
考えていると
「お前、今日ぜんぜん話聞いてないアル、熱でもあるのか?」
そういうと額をつけた
直にぬくもりが伝わる
その瞬間俺は俺の中の全てのしがらみを抑えるのがめんどくさくなった
死ぬとき以外任せたくなかった重力に身を任せた
ゆっくりと神楽との距離が縮まり浅い口付けを沖田は落とした

10秒ほどの無言の時間の後にようやく状況を把握した神楽が
「なにをするアルカ!」
と顔を真っ赤にしていった

「すまねぇチャイナ。お前がすきだって気持ちが抑えられなかった」
さらに顔を真っ赤にした神楽が
「私はお前なんか大嫌いアル」
そういって出て行ってしまった

神楽が出て行った後一人残された沖田は
やっちまったなぁと思いながら
頭の中で“万屋の旦那、俺が死んだら迷惑かけます”と小さく呟いた。