目を開けると見慣れた道場の天井があった
あっ、俺生きてたんだ・・・心の中でつぶやいた
ふと下に目をやると妙が自分の布団に覆いかぶさるように寝ていた
自分が寝ている間看病してくれたのか・・自分の手に不恰好に巻かれた包帯を見ながら思った
しばらくぼ〜〜っとしていると新八が入ってきた
「ったく・・・やっと起きたんですか」
「おぉ、新八」
「寝かしといてくださいよ。姉上昨日ほとんど寝てないんですよ」
「昨日・・・?」
なんだ?あいつ昨日いそが・・・ふと頭の中で何かがつながった
「新八、俺昨日から寝てたのか?」
「そうですよ。感謝してくださいよ。姉上昨日仕事休んで銀さんのそばにいたんですよ」
そんなやり取りにきずいて妙が目を覚ました

「あら!銀さん起きたの」
「悪かったな・・迷惑かけちまって」
「銀さんが迷惑かけるのなんていつものことじゃないですか・・・新八の給料とか」
「・・・すいません」
にっこり笑って言った妙に、それ以外何もいえなくなった。我ながら情けない

「何か食べます?」
「え゛っ!?いや!ほんとお構いなく!」
腹は減っていたが今どろどろのスープのような飯を食うのは、死に等しかった
「でも何か食べなきゃ」
「大丈夫!銀さんお腹減ってないから!」
「そ・・・そぉ?」
「う・・・うん。」
 お妙は立ち上がりかけたが、また座りなおした。

「銀さん・・そうだこれ」
「なんだよ」
 お妙が袋を取り出した。
 開けてみると少年ジャンプだった。
「なに?これ・・・」
「買って来いって言ったじゃない。」

 はじめに紅桜にやられて寝込んだとき銀時が頼んだやつだ。

「お前あの後、買いに行ったのかよ・・・」
「ええ。週刊よ。間違いないわ」
「俺が死んだらどうするつもりだったんだよ」
「無駄になりますね」
 お妙があまりにもさらりと言ったので、銀時は軽くショックを受けた。
「お前・・・」
「だって読むのは銀さんしかいないもの」
「まあ、そうだが・・・」
お前は俺を・・と言おうとしてお妙の表情がいつもと違うことに気づいた


「でも・・・」
そう言って、お妙がジャンプに視線を落とし、
「あなたが帰ってこなかったら、このジャンプ見るたびに銀さんを思い出してしまうわ」
と目を閉じて静かに付け加えた。
「捨てちまえよ」
「だめよ、私何かにすがらずに生きていけるほど強くない」
「・・・」
 銀時は、しばらくいつもとは違う悲しそうな横顔を見ていた。
抱きしめてやりたいと思った。しかし何人も切ったその手は、抱きしめることを拒んだ。
 天井に顔を向けてつぶやいた
なんて情けない男だ。俺は・・抱きしめることすらできないのか・・・
「銀さん」
呼ばれて顔を下に向けた。その瞬間何かやわらかいものに触れた
銀の唇に妙の唇が触れていた
わけが分からなくなった
「な、なに!?ちょ・・どうしたの?おかしくなったの?ちょっ、新八〜。お前のねーちゃんおかしくなっちゃったよ」
 混乱してる銀さんを見ながら、ふふっと微笑んで、
「これは私のところにちゃんと帰ってきてくれたお礼です。私を一人にしないでください」
と、静かに笑って言った。
その言葉を聴いたその一瞬だけは、俺の心で囁く声が消えた気がした
俺は妙を抱きしめた
「ちょっ、銀さん痛・・」
そこまで言って俺が泣いてるのに気がついてそっと頭をなでた

「心配すんな。俺はお前がここにいるならどこにもいかねぇよ」
そういって妙を抱きしめた。
銀時は頭の中でこの命続く限りいつまでもこの笑顔を護りたいと思った。







まぁ・・夕刻に「だめよ、私何かにすがらずに生きていけるほど強くない」という辺りから聞いてしまった新八に
木刀で突かれて生死の境をさまようことになるとは、このときの銀時は知る由もないが。