鋼の決意

初めて会ったとき彼女は何も話そうとはしなかった
ただ黙って僕が掃除するのを見ていた
だが毎度毎度掃除しに来る僕に悪いと思ったのか、話しかけてくるようになった


彼女は繊細で話す言葉一つ一つに気品があり、まるで一輪の花のようだった。
いつものように彼女がいろいろ話してくれた


彼女の話が終わった後に僕は言った。
「ルキアさんの代わりに死ねるなら、本望なんですけどね
 僕にはルキアさんを護れる力なんてないからせめて代わ

そこまで聞くと彼女は耐え切れずに口を開いた
「やめよ、花太郎」


「すみません」
と焦って花太郎は頭を下げた。

そんな顔で、そんな言葉を言われたら。生きたいと思ってしまう。
止めろ、花太郎。これ以上ここに心残りは作りたくない。
彼女の目がそういっている気がした。彼女の目から涙が流れた。

僕は彼女を抱きしめ
「ルキアさんが求める事なら、僕は何でもします。」
とありったけの優しさをこめて言った。

たぶん逃がしてといわれたら自分が死ぬことになっても逃がしただろう。

しかし返ってきたのはあまりに悲しい言葉だった


「なら・・ならせめて私が死んでも泣かないでくれ」

といった。

自分がもうすぐ死ぬのに何でこの人は。。僕の心配を
なぜこの人が。。
そう思うと自分の目に涙があふれた

いつからだろう僕が泣かなくなったのは

子供のころつらいことがあったら泣いていた。

でもいつしか困ったように笑って、そのつらいことに立ち向かうことをやめたんだ。


僕はある言葉を心の中で押しとどめ口を開いた

「分かりました・・絶対に泣きませんよ」

そして、やさしく笑った。

 

「ありがとう・・」

そういって彼女も弱弱しく笑った。

僕にはその言葉言った彼女が完璧な存在に見えた。

 

 

 

 

「僕はあなたより後に死にたくありません。だからどんなことをしてもあなたを助けます」

僕がこんなことを言ったら彼女はまた悲しむ。

だから口には出さない。

ただどんなことをしても彼女を助けたいと思った。

人生を棒にふるかもしれない選択が、皮肉にも僕の人生で一番強い決意だった・・